孤独の恐怖を乗り越える

実家に出戻り3年が経った

戻って半年程で父が入院し1度は直ぐに退院
自宅療養の準備で 
介護保険を申請して 医療ベッド搬入するも
数日後に父の腰の痛みは酷くなり
再度入院

医療ベッドの返却
見舞いと医師との面談で病院へ数日毎に
足を運び
入院中の必要なモノを買いに行ったり
退院後の転移先病院もしくは施設の検討と
ばたばたと過ぎていった

糖尿病持ちの為 免疫力の無い父は 
手術をしたが病状の回復は厳しく

医師からは、家族を呼ぶよう
2度言われた

入院して3ヶ月後に父は永眠した

こんなにも入院して直ぐに亡くなるとは
亡くなる半年前に北海道へ旅行してきたのに
足元はおぼつかなかったが
食欲はしっかりあり 
まだ数年は生きると思っていた

産まれてきてから 存在していることが
当たり前であって
同じ屋根の下に暮らしていたのに
そこのソファに座ってテレビを見ていた面影が
ダイニングの椅子に腰掛け
一緒に食事をしていた姿が

忽然と削除される

自身の生活の一部、空気も同然の
そこに居るのが当たり前の生活が、
突然に抜け落ちる

亡くなった日には、葬儀屋に連絡して
葬儀の段取り 祭壇 花飾り 香典返し準備
葬儀の日時場所の連絡
納棺 葬儀 お別れ 焼却 
そして、骨壺が自宅の祭壇へ

思い出して書いてると 記憶が甦り
悲しい気持ちがこみ上げてくる

それでも私は、息を引き取った日も
葬儀でも 泣けなかった

実感が湧かなかった訳では無い
入院して手術後 もう厳しいという
医師の話しで 死は覚悟していた
息を引き取り父の顔に触れた瞬間
冷たさが手に伝わってきて
生きてない事を実感した

喪主である高齢の母に代わり
病院と葬儀の手続きをする事が
頭の中にいっぱいで
悲しみに浸る余裕が無かった

葬儀を終え 2~3週間後に 夫の元へ
戻ることにしていた
戻る前に お世話になった病院へ
挨拶をしに行っておこうと 足を運んだ

まだ記憶が生々しく残っていて
病院の階段を上り
父の病室のあったフロアーに近づくと
ナースルームからピコンピコンと
いつも病室から聞こえていた音が耳に入ってきた
音が記憶を鮮明に呼び覚まし
胸がバクバクしてきた

病室で日に日に痩せこけていく父の姿
痛い痛いと訴える父
お風呂に入りたいと泣いている父
家に帰りたいと懇願する父

    泣けて書けない 続く